キーンベック(Kienböck)病


健康管理の第一歩は正しい知識からという事で、予約制で1人治療院のメリットを活かし細かい問診や症状の説明などに時間を割くことが多いです。

治療を提供する側としては「治す」という事に固執しがちですが、患者さんは必ずしもそうではなく、それが満たせない条件の中で如何に快適に過ごせるかを模索している事もしばしばですね。そもそも、健康に対する考え方も人それぞれで治るものならそれに越した事はないのですが。



さて、手首が痛いといって来院した患者さんがいました。
50代男性で数年前に病院でキーンベック病と診断。特定の動作で痛みが出てしまい不自由だが仕事を変える程ではない為、ずっとそのままにしておいたそうです。

まず、標準整形外科学(医学書院)からの抜粋です。以下

《【概念】月状骨の無腐性骨壊死症で、何らかの原因による月状骨への血行障害が本症を引き起こすと考えられている。青壮年男子に多く、特に大工など手に絶えず力が加わる職業の人に見られるので、外傷と関係があると考えられている。
【症状】手関節の掌背屈制限、運動痛、月状骨部の圧痛と腫脹が特徴的である。X線所見で月状骨に骨壊死を思わせる硬化、扁平化、分裂像が認められる。
【治療】手関節を装具などで固定する。この治療は長期にわたるので、労働者には早期に職場復帰できる手術的治療法が適切である。手術法には、月状骨有頭骨間固定術、月状骨摘出術、橈骨遠位部短縮術などがある。》以上。

キーンベック病は確かに青壮年の男性に多いですが女性や高齢者にも見られます。原因も、手にかかる負担ばかりとは言い切れない症例もあり誰にでも可能性がある病気(?)です。

手関節部には手根骨と呼ばれる小さな骨(8つ)が密集した部分があり月状骨はその一つなのですが、他の7つに無腐性壊死が少ない事を考えると、この骨の特徴が原因と関係ありそうですね。

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手首の骨の構造です。


①前腕の骨(橈骨)と接する位置にある。手をつく動作で圧力がかかる。
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*手首を掌背屈させた時に月状骨にかかる負荷のイメージ。

②靭帯の結合が弱く比較的不安定。
月状骨だけが飛び出したり、あるいは他の7つだけが飛び出す脱臼が多いなど、他との連絡が少ない。

③付着する筋肉を持たない。
骨を栄養する骨膜が少ない為、回復力が乏しい。

(④血管の分布に乏しく回復力が低い)

などが考えられます。

痛みの強いものなら社会復帰を考慮して手術が望ましいのでしょうが、微妙な症状の場合は難しくなりますね。

壊死を起こし変形した月状骨は元の形に戻ることがありませんから、手術以外を選択した場合は動作によって痛みが出ない(少ない)状態にしてやれば良いということになります。

当院では、動作時の月状骨の「あたり」が変わる様に徒手的に少しだけ位置を変えてみる方法をとり痛みの軽減を観察しました。
構造から察するに、この方法も全てに効果を上げるわけではありませんが、患者さんの希望によっては選択の価値はあると思っています。

ですから
「キーンベック病が治る」とは言いません。

手術をしない(したくない)症例の内、一部を回復に導くことができますよということです。

症状を回復させる為に休息が必要なものはたくさんありますが、原因が仕事だったりして簡単に休めないような状況の時には、コンスタントに治療を受けることや患者さん自身が病態を理解して振る舞い方を身に付けることが重要になります。「ああしろこうしろ」とか「これはやっちゃダメ」とか言っても「なぜそうしなければならないのか」がわからないとうまくいかないんですよね。

一般的に、病院などではこういった細かい話しを聞く機会は少ないと思い開業後は努めて実践することにしています。

お医者さんも当然この程度の事は知っていますが、患者さんの数などの関係でできないのが現状のようですし、固定と手術以外の手段については私のような立場の人間が少しでも補う事ができたらと思いますね。


治せるものは治しますし、残念ながらそうならないものには、どうするのがベターなのかをお話ししています。




おしまい。



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by real-incho | 2016-05-17 13:53 | 身体の話